コラム

気になる終活:相続時に必要な公的書類の最新事情

 「両親を看取る」経験はあっても、その中で相続人代表として『相続に必要な手続きや書類集めをされる方」はホンの一部です。一見簡単そうに思われる手続きや書類集めですが、被相続人(亡くなった方)や遺族(相続人)の戸籍謄本、住民票除票、印鑑証明書などを集めるだけでも、なかなか煩雑で時間のかかる大変な作業なのです。

 今回は、相続手続きで必要不可欠となる「公的な書類の集め方の最新事情」などをご紹介しましょう。

◆ 最初に集める書類
 
相続発生したら、まず”相続人が誰なのかを確定(証明)させる”ために必要な次の書類を揃えましょう。
● 被相続人の住民票の除票
 住民票の除票には、住民登録された方(被相続人)の死亡の事実が記載されており、最後にお住まいだった住所を証明する書面です。
 この書面は、被相続人の住所地の市区町村役場でとることができます。また、相続人なら委任状なしで取得できます。
もちろん、相続人であることの証明として、顔写真付きのマイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類も必要になります。

● 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) 
 相続人を特定するために、被相続人が生まれた時から亡くなるまでの戸籍謄本(=改製原戸籍謄本)を洩れなく集める必要があります。
 結婚や転居などで本籍地が当初と変わっているケースでは、以前はそれぞれの本籍がある市区町村へ戸籍を請求する必要があり、非常に手間がかかっていました。また、手書きの戸籍などは読み解くのに専門知識が求められる場合もあり、司法書士に依頼して戸籍を揃えてもらい、相続人を確定してもらうこともありました。

 幸いにして、”戸籍の広域公布制度”が2024年にスタートし、相続人【注】なら自分の最寄りの市区町村役場で”被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本”をまとめて入手でき、手間が大きくカットされるようになりました。
 【注】相続人でも、兄弟姉妹、叔父・叔母のように「直系でない親族の戸籍」は、広域交付では請求できません。
 また、市区町村数によっては1~2週間ほど待たされることもあるようですが、戸籍に関する知識がなくても必要な戸籍を入手できる画期的な制度です(一部コンピュータ化されていない戸籍など、取得できない場合もあるようです)。

● 相続人全員の戸籍謄本
 相続発生後に発行された「相続人全員の戸籍謄本」も集めなければなりません。これは”相続人(妻や子など)であることを証明する”ためで、もし相続人(子)が被相続人(父)より先に亡くなっていればその相続人(この妻や孫)が代襲相続人となり、代襲相続人全員の戸籍謄本が必要となります。
 いまはマイナンバーカードがあればコンビニでも入手できる自治体も多いので、以前のように役所に行かなくても手軽に入手できます。

◆ おススメは、”法定相続情報一覧図”の申請!
 被相続人と相続人全員の戸籍謄本が一式揃ったら、”法定相続情報一覧図”を申請されておくとよいでしょう。
● ”法定相続情報一覧図”はこんな資料!
 ”法定相続情報一覧図”は、法務局が亡くなった方(被相続人)とその相続人との関係性を証明する家系図のような公的証明書で、相続手続きでは大量になりがちな戸籍謄本の束の代わりに使える大変使い勝手の良いです

● ”法定相続情報一覧図”の申請手続き
 まず”法定相続情報一覧図”の原稿を用意します。
 といっても、心配いりません。法務局のホームページで家族構成に応じたExcelのひな形が準備されており、必要事項を入力するだけで誰でも作成できます。パソコンが苦手な方は手書きの原稿でも大丈夫ですので、安心です。

 原稿ができたら、下記①から④の書類といっしょに法務局に提出します。
 ① 被相続人の住民票除票
 ② 被相続人の戸籍謄本
 ③ 相続人全員の戸籍謄本
 ④ 申出者本人の本人確認書類

 提出する法務局は、被相続人の本籍地や住所地に限定されず、申出者の住所地の最寄りの法務局で構いません。手続きをする相続人にとっても大きな負担になりません。
 法務局への提出後、1週間程度で登記のうえ、認証文付の証明書が発行され、お手元に。

● ”法定相続情報一覧図”があれば簡単でお得!

 ”法定相続情報一覧図”がなかった時代は、銀行などでの相続手続きや不動産の相続登記では必ず「被相続人の戸籍謄本と相続人の戸籍謄本の束」の提出を求められましたが、今は代わりに”法定相続情報一覧図”1枚の提出で済んでしまうので、とても便利です。
ちなみに、”法定相続情報一覧図”はつぎのような書類です。
 なお、戸籍謄本は必要部数に応じて発行手数料がかかり、まとまるとバカになりません。ところが、”法定相続情報一覧図”はなんと『無料』で交付されます!
残高証明書の発行を依頼する銀行や証券会社なども数が多ければ、多めに交付してもらっておくとよいですね。

◆ 印鑑証明書は遺産分割協議が固まってから準備を!
 相続手続きに必要な書類は上述の書類だけでなく、相続人の印鑑証明書も欠かせません。手続きの進め方と印鑑証明書が必要となるタイミングをご紹介しましょう。
● 相続手続きの進め方

 相続が発生したら、次のようなステップで手続きを進めていきましょう。
 ① 相続人を特定

   被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を入手して、誰が相続人かを確定する。
 
② 被相続人の財産や債務をリストアップ
   銀行や証券会社から「預貯金や株式などの残高証明書」、土地や建物をお持ちなら「登記簿謄本や固定資産税評価証
   明書」などを入手して財産をリストアップする。忘れてはいけないのが、マイナスの財産としての債務(銀行借入金
   や葬儀関連費用など)。こちらも残高証明書や領収書などをとっておくことが肝要。
   債務は財産から差し引いて相続税額を少なくできるので、忘れずに。
 
③ 財産や債務の相続税評価額を算出
   相続税の課税対象となる財産や債務の評価額を算出する。いろいろな特例の適用や土地・海外財産などは評価が難し
   く、税理士への依頼がおすすめ。
 ④ 遺産の分割協議

   相続人間で、それぞれの相続する財産や債務を合意のうえ、決める手続き。
   なお遺言書があり、遺言どおりに財産を引き継ぐ場合は、このステップは必要ありません。
 ⑤
 相続税の申告と納税
   相続財産が相続税の基礎控除額を超えたり、相続税法上の配偶者の税額軽減や自宅の小規模宅地の8割評価減の特例
   などを適用する場合は、「亡くなった日の翌日から10ヵ月以内」に相続税の申告と納税が必要。10ヵ月なら余裕と思
   っていると、財産評価に時間がかかったり、分割協議で相続人が揉めれば、思いの外、時間に余裕はないものです。
 ⑥ 財産と債務の名義変更

   遺産分割協議や遺言の内容に沿って、資産や債務の名義を変更する手続きを進める。

● 印鑑証明書が必要となる場面は? 
 e-Tax(電子申告)で税務署に提出する相続税申告書にはハンコを押さなくて済む時代ですが、申告書に添付する遺産分割協議書(pdf形式)には『相続人の自筆の署名と押印済みのもの』が必要です。押印されたハンコが”実印”である証拠として、印鑑証明書(pdf形式)も分割協議書に添付して提出することになります。
 また、遺産分割協議書や銀行や証券会社の財産の相続手続きのための書類には実印の押印が求められるので、印鑑証明書は欠かせません。
 ちなみに、書類提出時点で発行後6ヵ月以内のものを求められることが多いので、あまり早くとってしまうと使えなくなるケースもあり、注意したいところです。
 なお印鑑証明書も、戸籍謄本や住民票と同じく、マイナンバーカードがあればコンビニでいつでも入手できる自治体が増えています。

 いかがでしたか?
 預金や株式などの残高証明書の発行や財産の引き継ぎ手続きにはかなり時間を要しますので、必要書類は便利な制度を有効活用してスピーディに集めることをお勧めします。