コラム

認知症になる前の”転ばぬ先の杖”=「任意後⾒制度」

 相続・事業承継対策コンサルティングひと筋に40年! 豊富な実績とノウハウを重ねる英和グループ(英和コンサルティング株式会社/英和税理士法人)では、長寿社会での新たな問題=認知症への対応、つまり、精神的にも財産的にも穏やかな老後を過ごしていただき、ご家族も安心して親御さんに寄り添える対応に取り組んでいます。

 今号は、「家族が認知症と診断されたら︕︖」シリーズの第2弾です。「頭がしっかりしているうちの準備」と「頭は元気でも、体が不⾃由なときの⽅策」をご紹介いたします。

◆ 頭がしっかりしているうちの準備「任意後⾒制度」
 シリーズ第1弾の「成年後⾒制度」は、”ご本⼈の判断能⼒に問題が発⽣してから”しか利⽤できません。実際には、ほとんどが家族が申し⽴てています。後⾒⼈選定も家庭裁判所が指定する関係で、家族が後⾒⼈になれるかも定かではありません。
後⾒⼈を「⻑男に頼みたい」「家族には適任者がいないが、永年付き合いのある弁護⼠にお願いしたい」など依頼したい⽅が決まっているなら、「任意後⾒制度」を使ってあらかじめ後⾒⼈を指定しておけば安⼼ということに。
● 任意後⾒制度の活⽤ステップ

 任意後⾒制度はご本⼈の頭がしっかりしているときに活⽤できる制度です。ご本人の判断能⼒に問題が⽣じてあとに初めて効⼒が発⽣し、その後は後見⼈が財産管理を代⾏してくれる仕組みで、具体的にはつぎのような⼿続きとなります。
【ステップ1】
任意後⾒契約を公正証書で作成(公証役場で作成して保管)
【ステップ2】
判断能⼒に問題が発⽣したら、家族などが家庭裁判所に「任意後⾒監督⼈選任」を申し⽴て
【ステップ3】
任意後⾒監督⼈が決まったら、後⾒がスタート
 任意後⾒⼈は、任意後⾒監督⼈に年⼀度は財務書類などの報告義務があります。

● 任意後⾒制度の利⽤状況

 任意後⾒制度はまだまだ利⽤者が少なく、2017年は804件(下図参照)でした。
 認知症などの症状が出なければ任意後⾒が始まらずに終わってしまうケースもあり、任意後⾒契約書の作成数なども未発表で、いまひとつ実態がみえてきません。

◆ 「任意後⾒制度」のメリットと問題点
 将来、判断できなくなった時の”転ばぬ杖”で安心、というワケではありません。任意後見制度にもメリットと同時に、気を付けなければいけない点もあります。

● 任意後⾒制度のメリット
 任意後⾒の契約時に、暗証番号など実際の財産管理に必要なデータをあらかじめ後⾒⼈(になる予定の⽅)へ伝える点は、成年後⾒制度との⼤きな違いといえます。預⾦⼝座、不動産、有価証券がどこにどれだけあり、預⾦の引き出しや解約に必要となる印鑑や暗証番号などの情報を契約時に整理して任意後⾒⼈(予定者)に伝えるため、実際の後⾒開始時には⽐較的スムーズにスタートできるメリットがあります。

● 任意後⾒制度での問題点
 
「任意後⾒制度」に絡む犯罪の典型例は、”任意後⾒制度をあえて活⽤しない”というやり⽅です。
 家族や後⾒⼈予定者が、本⼈の判断能⼒が低下しているのを知っていながら、後⾒契約をスタートさせず(家庭裁判所に申し出をしない)、誰からも監視されることなく、すでに判断能⼒が不⼗分となっている本⼈を⾔いくるめて、不適切な契約や財産処分を⾏って不当な利益を得るという事例です。

 任意後⾒⼈(予定者)は契約をした以上、「本⼈の判断能⼒に問題が⽣じていないかどうかを定期的に確認する義務」があり、こうしたことは起こってはならないのですが現実は…。

◆ アタマは元気でも、身体が不自由な時の方策、「財産管理委任契約」
 「⾝体が不⾃由なので、代わりに銀⾏でお⾦を引き出してほしい」「今は⼤丈夫だが、体⼒がなくなってきたので契約に⽴ち会ってほしい」といったケースは、どうすればよいでしょうか︖
 家族の誰かに依頼する、信頼する第三者に依頼するといった場合、「財産管理委任契約」を締結する⽅法があります。契約があれば、銀⾏や証券会社などでの⼿続きでいちいち⾯倒な委任状を必要とせず、スムーズに処理できます。
● 任意後⾒制度との違い

★ 契約形態

 「財産管理委任契約」では公正証書は作らず、⼀般の契約書を締結します。このため、社会的な信⽤度は「任意後⾒制度」ほど⾼くありません。
★ 契約スタート時期

 任意後⾒契約は「将来、ご本⼈が認知状態になったときの財産管理や介護などを依頼する契約」ですが、「財産管理委任契約」は契約と同時にスタートできます。「いま困っている⽅」向けの制度といえましょう。
★ 監督⼈の不在

 任意後⾒契約では、”任意後⾒監督⼈”が任意後⾒⼈を監督しますが、財産管理委任契約では監督⼈は(まだ頭が元気な)ご本⼈になります。財産のすべてを任せてしまいかねないため、よほど信頼できる相⼿でないとリスクはかな
り⾼いと考える必要があります。

● 契約は任意後⾒制度とセットで︕

 「財産管理委任契約」を使うなら、判断能⼒に問題が出た時に備えて任意後⾒契約も締結しておきましょう。同じ⽅に財産管理を依頼しておけば、通常は、判断能⼒如何に関わらず⼀⽣その⽅にお願いできます。
 なお、「財産管理委任契約」は⼀般の契約書を取り交わすことになりますが、財産管理を依頼する重要な契約のため、必ず専門家と相談して作成しましょう。

 第3弾では、「任意後⾒制度」や「財産管理委任契約」のような効果+遺⾔書の代わりにもなる「⺠事信託」の仕組みをご案内します。

◆ アタマがしっかりしている今がご相談のチャンス!
 ご本人がしっかりしているからできるのが”任意後見”で、これには財産管理がつきものです。聞きなれない”任意後見や財産管理”は、ご本人とご一族の将来を考える力のある経験豊富な専門家集団の英和グループ(英和コンサルティング株式会社/英和税理士法人)に相談のうえ、家族の十分な理解を得たうえでの活用をお勧めします。

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