コラム

家族が認知症と診断されたらどうすれば?

 相続・事業承継対策コンサルティングひと筋に40年と、豊富な経験と実績を重ねる英和グループ(英和コンサルティング株式会社/英和税理士法人)では、相続対策はもちろんですが、長寿社会の中で安心してシルバーライフをお過ごしいただくため、「家族が認知症と診断されたらどうすれば?」をテーマに、高齢者などの”財産管理の代行の法的な仕組み”をシリーズでご案内してまいります。

 「預金口座やクレジットカードの暗証番号、ネットショッピングのIDにパスワード、自宅のカギ…」などを忘れぬようにメモしておいたが、そのメモをなくしたり、置いた場所を忘れたなど、誰もがこんな不安や経験をお持ちです。

 「預金口座やクレジットカードの暗証番号、ネットショッピングのIDにパスワード、自宅のカギ…」などを忘れぬようにメモしておいたが、そのメモをなくしたり、置いた場所を忘れたなど、誰もがこんな不安や経験をお持ちです。
 今号では、物忘れなどが進行してご家族が認知症と診断されたときにどうすればよいのかについて、ご紹介します。

◆ 実は意外に大切!法的な財産管理の代行制度

● 法的な代⾏制度は”成年後⾒制度”だ︕

 「認知症などで判断能⼒がなくなった⽅」や「⾼齢で判断⼒が鈍くなってきた⽅」の代わりに、”後⾒⼈”が「預⾦の引き出し」や「不動産の売買契約」「ヘルパー」などの契約⾏為を⾏う仕組みが”成年後⾒制度”です。
 最⾼裁の統計では、2017年中の成年後⾒申⽴件数(下図参照)は3万5,737件(前年⽐4.3%増)と、初めて3万5千件を超えました。

● 成年後⾒制度の利⽤⽅法

 成年後⾒制度は、つぎのステップで進みます。
【ステップ1】
申し⽴て   本⼈・配偶者・4親等内の親族等が家庭裁判所へ制度の利⽤を申し⽴て
【ステップ2】
後⾒⼈の選任 家庭裁判所が審判し、成年後⾒⼈を選任
【ステップ3】
後⾒開始   成年後⾒がスタート
 申⽴⼈中、最も多いのが⼦(27.2%)、ついで市区町村⻑(19.8%)、本⼈(14.2%)と続いています。⾏政⻑の申⽴件数が増加している背景には、⾝寄りのない⽅々の⾼齢化や障害者の地域移⾏が進んでいるからでしょうか。また本⼈からの申⽴では、セールスマンからの営業を断りきれないなど、ご⾃⾝で不安を感じて申し⽴てをされる⽅もおいでのようです。
 申⽴ての動機は、「預貯⾦の管理、解約(約8割)」が断然多く、つぎに被後⾒⼈の施設⼊所や契約、治療や⼊院⼿続きといった「⾝上監護」が続いています。

◆ 後⾒⼈には誰がなる︖ 妻・子・孫、あるいは…
 成年後⾒⼈には、全体の26.2%(前年28.1%)で親族(⼦、その他親族、兄弟姉妹、配偶者、親の順)が選任されています。近しい関係で信頼や安⼼感があるためといえましょう。とはいえ、年々親族による成年後⾒⼈は減少傾向で、つぎのように専門家に任せるケースが増えています。
親族以外の第三者が成年後⾒⼈に選任されたケースは全体の73.8%(前年71.9%)でした。
 つまり、4⼈に3⼈は他⼈が後⾒⼈で、内訳はざっとつぎのとおりです。
● 司 法 書 ⼠ 9,982件(前年9,415件)    6.0%増
● 弁 護 ⼠ 7,967件(前年8,050件)   ▲ 1.1%減
● 社会福祉⼠ 4,412件(前年3,995件)  10.4%増


 ⼦のいない夫婦や未婚⾼齢者の増加で、親族以外が成年後⾒⼈になる割合はさらに⾼まることが予想されます。

◆ 成年後⾒制度にも問題が︖
● 救いようがない成年後⾒⼈の犯罪

 成年後⾒⼈の司法書⼠、弁護⼠、ケアマネージャーなどが、被後⾒⼈の預⾦を勝⼿に引き出すのは「業務上横領」(犯罪)になります。また、後⾒⼈の⻑男(⼦)が⽗親の預⾦を勝⼿に引き出して私⽤に使ってしまう事件も後を絶ちません。
 成年後⾒⼈の監督者の家庭裁判所は報告書を年に1回チェックするだけで、目が⾏き届かないのが実態です。本⼈のモラルに頼るだけでなく、犯罪抑⽌効果のある仕組みへの⾒直しが必要です。

● ⼿続きにかかる時間

 成年後⾒制度は、申⽴てから後⾒スタートまでに時間がかかるのも⽋点のひとつ。2017年は全体の約8割が家裁での審理を2ヵ⽉以内に終えているものの、残りはそれ以上の⽇数を要しています。預⾦の引き出しや介護契約ができない状況などでお困りの家族にとっては、後⾒開始までに時間がかかることが問題で、後⾒⼈選定⽇数の短縮が望まれます。
 次回以降では、「体が不⾃由で財産管理を頼みたい⽅」や「元気なうちに後⾒⼈を決めておきたい⽅」向けの仕組みをご案内していきます。

◆ 認知症を踏まえた新相続対策なら、英和グループにご相談を!
 認知症と相続のかかわりを熟知する専門家は極めて少なく、気軽に相談というわけにもいきません。
相続税対策も大切ですが、認知症となった方の残された人生を有意義に過ごしていただきながら、財産分与・納税資金などまで幅広く相談いただける英和グループ(英和コンサルティング株式会社/英和税理士法人)にお気軽にお問い合わせください。

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