コラム

退職金は受取り方ひとつで、手取りが大きく違う!

 中小企業に特化した経営・業績改善、事業承継や新相続などの対策をお届けしている英和グループ(英和コンサルティング株式会社/英和税理士法人)では、事業承継や相続に関連して注意しておくべき点についてご紹介しています。

 今号では、在職中の死亡時では勤務先から支払われる”死亡退職慰労金”や”弔慰金”が、お香典同様、遺族の受け取るお金であり、相続税がかからないのかなど、こうした取り扱いをご案内します。

 社員はもちろん、創業経営者や2代目経営者などがリーマンショックやコロナ禍を乗り越えてイザ退任する際の退職金(退職慰労金)は受取り方(=辞め方)ひとつで、手取り額が大きく変わってきます。
 そんな退職慰労金などの取扱いを「退職のしかた」ごとにご紹介しましょう。

◆ 存命中に受ける退職慰労金の取扱い

 社長が退任されるケースでも、勇退時は●代表取締役からの退任(非常勤取締役としては残る)と、●完全に取締役などから退くケースに分けられます。
● 非常勤取締役として残るケース

 社長が代表取締役を退き、非常勤の取締役相談役や監査役に就任して職掌分掌(=担当業務の内容)が大きく変わって実質的に経営にタッチしないケースでは、退職慰労金規程等に沿って退職慰労金の打切り支給が受けられます。
 それには、非常勤の取締役などに就任後の役員報酬を「社長退任時の最終月額報酬の1/2以下にする」ことも条件になります。
★ 退職慰労金の打切り支給時の課税
   退職所得として所得税(=有利)

 退職慰労金から”在任年数に応じた退職所得控除”を差し引いた金額の1/2を課税所得として、(給与所得などとは分けて)分離課税で所得税などを計算します(後述)。
★ 打切り支給によるメリット
 完全に会社から退かないまま、つまり、非常勤の取締役などに就任すると、少額でも役員報酬が得られる状況となり、将来への備えがしやすくなります。さらに、こんなメリットまで。
・シルバーライフの生活設計資金としての活用

・所得税等の負担の軽減メリット:
退職所得控除と1/2課税のため、所得税等の負担が軽減。最高税率(55%)適用でも総額の27.5%の税負担(注)で済みます。
(注)復興特別所得税を除いています。

● 役員から完全に退くケース
 役員から完全に退かれる場合は、退職慰労金規程等に基づいて退職慰労金の支給を受けられます。また、支給額は退職所得として上記同様の取扱いを受けられ、大きなメリットを得られます。

 ひとつ気を付けていただきたい点は「退職慰労金が不相当に高額」であるケースです。例えば、同業他社との比較、最終月額報酬を急遽引き上げた場合、支給額自体が異常に高額などでは、”過大退職金”とみなされて、会社での損金算入が認められません。過大部分は法人税が課税されることにもなり、所得税と法人税のダブルパンチに。

◆ 社長死亡時の退職慰労金などの取扱い
 社長が交通事故などで突然死亡や病気による死亡のケースでは、会社から退職慰労金規程等に基づいて退職慰労金が相続人(遺族、優先順位は配偶者)に支給されますが、こちらは相続税の対象になります。

● 死亡退職金                  相続税の対象
★ 通常の取扱い

 死亡退職金は本来受取人(遺族)固有の財産ですが、相続税法上は「みなし相続財産」として課税されます。
★ 非課税メリットが

 死亡退職金は遺族の生活保障目的があり、相続税では非課税枠が儲けられています。
 【非課税となる死亡退職金】=500万円×法定相続人の数

 たとえば、法定相続人が妻と子2人なら、1,500万円までの死亡退職金には相続税がかかりません。

● 弔慰金
         原則:非課税(超過分:相続税の対象)

 死亡原因や状況などを考慮して、特に創業者や経営者については内規や株主総会・取締役会などの決議を経て多額の弔慰金が支給されるケースがあります。高額版のお香典ともいえるかもしれません。
 死亡退職慰労金と別に支給する弔慰金には、次のような非課税メリットがありお得です。
★ 業務上の死亡:
被相続人の死亡時の普通給与(注)の3年分(=36ヵ月分)
★ 業務外の死亡:
被相続人の死亡時の普通給与(注)の半年分(=6ヵ月分)
 (注)普通給与は、給料、俸給、賃金、扶養手当、勤務地手当などの合計をいいます。

◆ 事前相談が必須! 支給する際の注意点! 
 こうしてみると、退職慰労金や弔慰金の支給などは誰でもできそうに思われてしまいがちですが、税務調査で過大退職金などとして損金算入を否認されたケースも多くあります。
 退職慰労金や弔慰金の支給には、適正な役員退職慰労金規程ないし内規などの整備、会社法や税法上の支給要件を満たす書類・状況や支給時の必要書類の準備、分割払いを含む支払方法の検討など、専門家への相談が欠かせません。

 また、相続税納税資金が不足する場合は遺族にとっては退職慰労金などの金額次第では死活問題になりかねません。他の方法による納税資金捻出対策も相続後でもOKです。
英和グループ(英和コンサルティング/英和税理士法人)に気軽にご相談ください。

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