コラム

信頼される決算書とよくあるトホホな決算書~信用は見た目でキャッチ!~

 昔は、金融機関からの資金調達(=借入れ)などの際に業績を良く見せるために、「決算書をお化粧=粉飾」する会社が見受けられました。近年は、こうした行為や加担者も減少の一途をたどっています。
 もちろん、決算書のお化粧は問題外ですが、見た目のよい、見る者を惹きつける決算書に置き換えるだけでも、金融機関、税務調査官や取引先の大手企業などの利害関係者の受ける印象が180度変わります。
 そこで、今回は信用を失いかねない残念な決算書と良い印象を与えるスマートな決算書についてご紹介しましょう。

◆ ところで、決算書にはどう役に立つ?
 決算(報告)書は決算期ごとに作られ、つぎのようにB/S・P/L・C/Sなどの財務諸表で構成されています。お手元に、これと月次決算書(=試算表など)をおいて、それぞれの意味合いや見るべきポイントをご覧ください。
● B/S(貸借対照表)    お金の出どころ(負債・純資産の部)と使い途(資産の部)をまとめた表
 B/S(Balance Sheet)は期末時点の財産・債務などの状況(残高)をまとめた表で、右手にお金の出どころ(資金調達先)、左にはその使い途が表示されます。また左右とも、現金化されやすい順(流動性配列法)に、1年以内に現金化される科目は”流動資産””流動負債”に、1年超にわたる科目は”固定資産””固定負債”として記載します。
 純資産の部では、株主から拠出された資本金や過去の累積利益、つまり、外部には返済不要な自前のお金の出どころが記載されています。
● P/L(損益計算書)    1年間などの売上や業績をまとめた表
 P/L(Profit &Loss Statement)では、売上から売上原価(製造原価)を差し引く形で売上総利益(粗利益)を表示し、さらに販売費および一般管理費(販管費)を差し引いて営業利益を計算して表示します。他にも経常利益や税引き前当期純利益なども表示され、自社のもうけの状況がわかる表です。
 また2期比較のP/LとB/Sがあれば、C/S(キャッシュフロー)の状況もざっと把握できます。
● C/S(製造原価報告書)  生産コストをまとめた表
 製造業では、C/S(Cost Statement)で製造原価を、材料費、労務費、外注加工費、製造経費の4つに区分して表示します。これで材料費率や変動費率がわかるので、どうすれば利益を最大化できるかのヒントや自社の強みを見つけることができます。

◆ 銀行から見てトホホな決算書
 決算書は”科目の並べ方にも意味やルール”がありますが、多くの中小企業ではそのようには作成されていません。
 社長や顧問税理士も意識していませんが、利害関係者にとっては「会社評価の拠りどころ」の最初のポイントが決算書や月次試算表で、注視しています。意味不明な科目や並べ方の無視は信用棄損リスクにつながりかねません。
 その結果、資金調達では金融機関から、税務調査では調査官から厳しい指摘を受けたり、取引先大手企業などからは信用不安を持たれかねず、せっかくの決算書が会社の今後にマイナスインパクトを与えかねないものに。
● パッとしない、残念なB/S
 B/Sでは上述のように流動性配列法に沿って適切に表示するものですが、そう作られていてもつぎのような点があればよい印象を与えられません。
★ 仮払金、立替金、貸付金、借入金、仮受金などの多額の残高:

 プロの自覚のない税理士などがついている会社でよくみられる科目です。
使途がわからない科目には怪しげな債権債務や不良債権が含まれていがちで、特に、社長との取引残高は注目が集まりやすいのです。
★ 月商比で2倍以上の売掛金残高:

 
不利な資金回収条件であり、取引先破たんにより多額の不良債権を抱えかねない会社として見られがちに。また、実質的に回収不可能な債権が含まれているリスクもあるのです。
★ 多額の買掛金と未払金:

 
銀行借入れが難しく資金繰りが厳しい会社のため、仕入れ代金やその他の支払いが遅れているとみられがちです。つまり、信用不安につながるリスクが。
★ 多額の未払費用:

 未払費用の残高が多いケースでは、法的に確定債務の未払金が紛れ込んでいて、B/S自体の信頼性が低く見られがち。
★ 多額の借入金:
 返済リスクに懸念がある会社とみられがちで、仕入先などが信用情報機関の調査データを入手して実態がわかってしまうと、少なくとも手形払いなどは受け入れられない羽目に。

● パッとしないP/Lと”販売費および一般管理費の内訳”
 原価率や営業利益率などを良く見せようとして、逆に問題点(知られたくない事実)をアピールしまうP/Lも。
★ 売上原価から多額の商品廃棄損を除外など:

 原価率を良く見せるために、本来原価に反映させるべき商品廃棄損を特別損失や営業外費用に計上すると、多額の商品廃棄損の存在を第三者に強調する結果に。また、商品廃棄をせずに、販売可能な棚卸資産として計上すれば、架空の資産計上となり問題に。
★ 販管費の内訳の配列がメチャクチャ:

 多くの中小企業で見受けがちで、P/Lが見づらい(把握しづらい)理由の一つにもなっています。
 ・見えない役員報酬:
一般社員の給料・賞与と合計し、わからないよう表示にしてあるケース
 ・見えない通勤交通費:
旅費交通費や給与に含めているケース
 ・販売費、一般管理費の順に表示されていないケース:
最も多くみられます。
 ・注目を集めたくない科目:多額なのに販管費の内訳の下方に表示されているケース
 ・少額の減価償却費:
利益計上のため、減価償却費を計上しない、少額計上するケース
 ・多額の雑費:
何でもかんでも雑費に入れているケース
★ 営業外費用に保険料を計上:

 多額の保険料を販管費でなく営業外費用に計上し、営業利益を多く見せかけるケースも見受けられます。

● パッとしないC/S

 C/S(製造原価報告書)ではつぎのような弱みをチェックできます。
 ★ 売上規模からみて少ない製品・仕掛品残高:
 実地棚卸で数量は確認しても、製品の進捗状況に応じて使った材料費、労務費、外注加工費、製造経費が加えられておらず、製品などが過少計上されているリスク
 ★ 多額な賃金手当(労務費):

 取締役兼任の工場長など給与が含まれているリスク

 ★ 期末の月商からみて少ない材料費や外注加工費:
 締め後、期末までの未請求の材料費や外注費が計上もれで、製品・仕掛品の過少計上リスク
★ 多額の外注加工費:
 社内での内製化対応力が弱く、コストダウン対応ができにくく、設備投資能力も低いとみられがち。

◆ 好印象を与える決算書

 では、利害関係者に良い印象を与える決算書づくりはどのようにすればよいのでしょうか。
● 中小企業会計要領(会計基準)に沿って決算書を作ろう!
 中小企業向けに特化して作成された会計上の指針に沿って決算報告書を作成する必要があります。
⇒金融機関、取引先大手企業、税務調査では、会計要領や会計指針に沿った決算書なら好意的な評価が得られます。
 こうした会計処理を行っているかは、チェックリストの添付有無で簡単にわかります。またこうした対応で、資金調達の際の優遇貸出制度や保証料の割引制度なども受けられます。
● 決算書の問題点への個別対応 

 上述のパッとしない決算書での指摘項目があれば、それを解消するだけで大きく印象が変わります。

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 なおその際は、過去2期分の決算書、法人税申告書・科目内訳書などをご提示いただくことになります。

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