コラム

名義預金には気を付けよう!~相続調査の重点項目~

 中小企業に特化した経営改善、事業承継や新相続対策などのコンサルティングの英和グループ(英和コンサルティング株式会社/英和税理士法人)では、相続がらみでの注意しておくべき点についてご紹介しています。

 今号では、母や子・孫名義にしたはずの預金が故人(父)ものとされたケースと、そうみなされないための対応法のご案内です。

 故人(父)が亡くなって遺産の分割や相続税の申告・納税も終わった2年後のある日、税務署から父の相続税調査についての連絡が入りました。 頭の中は、父が遺した「多額の母、兄弟や孫名義の預金」が駆け回り続ける状況に。
◆ 「名義預金」はどうなる!?

 「名義預金」は、自分以外の名義(多くは、配偶者・子・孫)の預金口座に自分のお金を貯めておくことです。
 さて、相続税の調査などで見つかってしまうとどうなるのでしょう?
● 「名義預金」は相続財産として課税!?

 「名義預金」は、相続後に家族がが生活に困らぬようにとの思いとコストもかからず簡単な”相続対策”としてよく見受けられます。もちろん、税務調査ですべての家族名義の預金が「名前を借りただけの借名口座」として相続財産とみなされるわけではありません。
 とはいえ、「名義さえ変えておけば…」とお考えの方もたいへん多く、定期預金の満期時に家族名義の定期に切り替えたり、毎月家族名義で積み立てたりなどでは適切な贈与手続きをとっていなければ、「名義預金」として相続財産に含まれて追徴課税を覚悟しておきましょう。名義を変えても、法的に適切でなければ何ともなりません。

● もれやすい「名義預金」!
 国税庁発表の「最新の相続税の税務調査のまとめ」では、申告もれなどの誤りの発見割合は85%以上で、うち申告もれ総額(3,538億円)の36.5%(1,268億円)が現金・預貯金でした。この現預金の申告もれの多くが「名義預金」といわれ、税務調査で調査官が必ず注目する相続財産(→名義上は、子や孫など)なのです。

◆ 「名義預金」とみなされるケースと対処法

● 「名義預金」とみなされるケース

 実際に、”長年贈与しており、口座名義は家族名で、贈与も銀行振り込みで証拠を残してあるから大丈夫!”と自信満々の方々もおいでですが、実際に贈与実態が伴っていなければ「名義預金」とみなされるリスクが高くなります。
 では、「名義預金」とみなされるケースを具体的にチェックしてみましょう。
 ★ 預金の存在を名義人(家族)が知らない(知らなかった)

  孫が年少で贈与の事実を認識できず、法定代理人(親権者:両親)との贈与契約もなかった。
 ★ 預金の通帳・印鑑を被相続人が管理

  預金通帳や銀行取引印を亡くなった被相続人がまとめて保管していた。 
★ 被相続人と同じ印鑑を使用

  被相続人は、家族の預金口座も自分の銀行取引印を使っていた。 
★ 贈与した証拠がない

  現金で手渡しのため、贈与契約も贈与額の送金の事実もなく、事実関係を証明できない。

● 「名義預金」とされないための対応
 そこで、つぎのように対処しておけば「名義預金リスク」はかなり低くなります。
 ★ 口座名義人(=受贈者の家族)に預金の存在を周知しておく

  「自分のお金が無くなれば、名義預金のお金を使おう」との考えで、家族に贈与の事実を伝えないケースはよくみられますが、いいとこどりではダメ。贈与事実と預金のっ存在は受贈者に伝えておきましょう。
 ★ 預金の通帳・印鑑を名義人が管理しておく

  もちろん、通帳や銀行取引印も名義人の家族が持っていて当然です。子・孫が年少者なら、親権者の親が管理しておけばよいです。
 ★ 名義人それぞれの印鑑を使用する

  家族分の取引印を作るのは面倒・ムダと考えてはいけません。自分の口座の資金は自分で引き出すのですから、贈与者の印鑑でよいはずはありません。
 ★ ”客観的な証拠”を残しておく

  これがもっとも面倒で煩わしいのですが、調査官に疑いの目を向けられないためにも客観的な証拠を残す努力をしましょう。ノウハウの一端をつぎの項でご紹介しましょう。

◆ 贈与の決め手の”客観的な証拠”とは?
 実は、難しいことではありません。”贈与の事実”を形に残せばよく、「贈与する側(被相続人)」と「される側(妻・子・孫)」の双方が”贈与の事実”を認識していればよいのです。
 具体的には、つぎの3つがあれば「名義預金」リスクはかなり低くなります。
 ● 贈与契約書の作成・締結

 ● 贈与税の申告と納税
 ● 通帳などへの振込みの記録
 なお、契約書や申告書を用意しても、現金でのやり取りでは「名義預金」リスクは残ります。

◆ かんたんな贈与でもノウハウを持つプロへの相談がキー!

 誰でも簡単にできそうにみえる贈与ほど、贈与の必要性、受贈者の範囲、贈与金額の妥当性、具体的な贈与法や客観的な証拠の整備など、事前に詰めておくべきことがいろいろあります。
 特に「名義預金」の有無は調査官が最初にチェックする項目で、申告もれナンバー1の項目です。忘れたころにやってくる税務調査で思いもかけない相続税を追徴されぬよう、名義預金には十分ご留意ください。

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