コラム

「会社はお金が回っていれば大丈夫!」といわれますが?

 コロナ禍前まで順調だった売上や業績は、業種・業態によって大きく下降し、”倒産”の二文字がちらつく瀬戸際まで追い込まれる会社もちらほら。

 ちょっと前までは、お金さえ回っていれば安心ということで、銀行借入金とは別に、信用で取引代金を手形払いとしている会社も多くみられました。実は、そうした会社はコロナ禍で風前の灯火の状況に追い込まれています。
 

◆ 多くの会社の賢い?資金繰りテクニック
 コロナ禍前、企業は銀行からの融資資金だけでは賄えない運転資金をつぎのような方法でカバーしていました。
● 仕入の支払は、手形の発行で決済を先送りに!    効果:支払の余裕期間は135日
 小口の支払い以外は手形の発行により”決済期日を先延ばし”して、銀行口座での決済時期を90日(~120日)程度先送りします。その結果、商品の仕入時期からは135日(4.5ヵ月)も、代金を支払わずに済ませ、資金繰りを軽くできました。もっといえば、紙切れの手形を発行するだけで、3ヵ月以上金利なしで支払いが先送りできるわけです。
★ 未請求の期間(=商品などの納入から請求まで)     平均半月
★ 請求後、手形発行までの期間(=買掛金・未払金)    1ヵ月程度
★ 手形発行から決済までの期間(=支払手形)       通常90日(3ヵ月)


● 売上代金は、手形を割り引いて現金化!       効果:手形期間の大幅短縮化

 一方、売上代金も手形で受領しますが、速やかに銀行で割り引いて(注1)現金化し、毎月の人件費、家賃などの費用の支払に充てていました。
(注)1.会計上は、手形割引の手数料は「手形売却損」として費用に計上。

◆ 手形発行による資金繰りテクのリスク

 一見、自己資金ゼロでの事業が運営ができ、資金繰りの悩みはなさそうに見えますが、リスクはないのでしょうか。
● 支払手形は管理の手間など

★ 無視できない手形関連コストと管理の手間

 手形購入時の銀行の手数料は大幅に引き上げられ、発行すれば印紙税がかかったうえ、決済(支払)期日には銀行口座で間違いなく引き落としできるよう管理する手間もかかります。
万一、期日決済できなければ不渡りとなり、事業継続も危ぶまれます。
★ 不況リスク

 コロナ禍での売上急減など経済環境の激変でもあれば、発行済みの支払手形累計額の決済見通しが立たないことに。
 引落が必要な手形は仕入代金のおよそ3~4ヵ月分となり、中小企業にとっては巨額の負担です。銀行に融資依頼しても、業績の改善見通しがなければ応じてくれず、破たんにつながりかねません。

● 受取手形の割引リスク

 低金利下では割引料率も低く、痛みを感じずに現金が手に入ります。ところが、受取手形の決済日に得意先が銀行決済できなければ、割引き銀行からはすぐに支払いを求めてきます。余裕資金や、他の受取手形の割引余地がなければ、信用棄損と事業継続リスクが生じる羽目に。

◆ 手形はやめて、リスクとフトコロ具合を改善しよう!

 英和コンサルティングでは、得意先から手形は受け取っても、仕入先などへの手形発行はしないか手形残高を減らすアドバイスをし続けてきました。製造業は未だに手形のやりとりの多い業種の代表といえますが、お客様の多くは、仕入代金決済などでの手形発行は取りやめて、将来のリスク要因をなくしていただいた結果、財務体質も強固になり、厳しい中でも業績も維持されています。

 具体的な、手形の減らし方や取り止め方をご紹介しましょう。
● 長期借入金による資金調達

 手形発行での資金負担の軽減といっても、要は決済の3ヵ月先送りであり、当初の手形発行から3ヵ月間だけ資金負担が楽になる話で、その後は3ヵ月遅れの決済が毎月やってきます。
 そこで、低金利下の今、3ヵ月分の手形決済資金と1~2ヵ月分の手形発行額程度を、長期資金(3~5年)で借り入れて毎月返済します。単純化すると、1年かけて手形ひと月分を返済する形となり、中小企業でも無理なくできるのです。
● 余裕資金での手形減らし

 一度に手形ゼロは負担が大きい会社では、手元資金に余裕が生じたタイミングで、「たとえば今まで50万円以上の代金を手形決済としていれば、今月から100万円以上の代金に限定して手形を発行に切り替える」のです。
 もちろん、今後は50万円以上100万円未満の取引先は(例)翌月末払いでの送金での決済に変更するので、若干の値引きや原材料の優先確保をお願いするなどで、メリットを得る工夫をされるようお勧めします。

◆ 間もなくコロナ特別融資の返済で、資金繰りが最悪に!

 特にコロナ禍入り以降、「資金繰り(現預金)に余裕さえあれば会社が安泰」ということで、政府も都道府県も中小企業の資金支援のために”コロナ関連特別融資(利子補給など含む)”を行っています。銀行も保証協会の保証付き融資などで積極的に中小企業の資金支援を行ってきました。
● コロナ関連融資のコワ~イ実態

 低金利の資金調達のおかげで、業績面では厳しいものの資金は潤沢な中小企業が増えました。こうした特別融資は、ありがたいことに1~2年間は元本返済を据置く契約となっており、さらに、資金繰りを楽にしてくれたのです。

 実は、コロナ関連融資の元本据置期間が1年なら間もなく元本返済が始まり、2年据置でも来年の今頃には返済がスタートします。返済期間が5年(据置1年)なら”4年で返済”、つまり、2割も短い期間で多額の返済をすることになり、中小企業倒産の引き金が引かれかねない状況です。返済が始まっても、売上や業績はコロナ前には戻っていないので。

● 倒産すれば、無罪放免に!?

 「みんなで借りれば怖くない」といって片端から借り入れをお勧めされた専門家もいましたが、徳政令(返済を免除する法律)は不公正であり、返済期間の延長はあっても、返済免除はありえません。つまり、一時何とかしてもらえても、必ず返済を求められることに。
ちなみに、「倒産すれば無罪放免になる」と考えられた方は残念!多くの融資には保証協会の保証がついており、保証協会が弁済すると求償権は保証協会に移転し、経営者に請求が回ってきます。もちろん、経営者が自己破産する覚悟であれば別ですが。

 こうしてみると、「正道の経営を歩む」前提で、経営のありようを考えていくことが大切ですね。英和コンサルティングをはじめとする英和グループでは、経理まわりの業務はもちろんのこと、経営改善から事業承継対策、税務申告までをワンストップでカバーしています。

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