コラム

土地をタダで借りていると贈与!? それとも

 親の土地に、子が自宅やアパートなど(賃貸物件)を建てていることがよく見受けられます。このように親子間でタダで土地の貸し借りしていると「借地権の贈与」として、子に巨額の贈与税がかかってしまうのでしょうか?

◆ 土地をタダで借りても贈与にならない!
 親子間などでの”土地の無償での貸し借り”を「使用貸借」といい、特殊な取り扱いとなりますので、税務上の土地の取扱いをご紹介しましょう。
● 無償なら贈与税の対象外に

 親が子に土地を時価よりも安く売れば、”みなし贈与”として贈与税の対象になります。ところが、権利金や地代を支払わずに、タダで親の土地に子が家を建てて利用(使用貸借)しても贈与税の対象にはなりません。
 逆に、親に地代を支払っていると、賃借権や借地権の問題が生じてしまいます。地代を払うなら、せいぜい固定資産税程度として、事実上タダと変わりない状況(使用貸借)としておくことがポイントです。

● 「使用貸借」は賃貸借とどう違う?

 物の貸し借りで賃料が伴う取引を「賃貸借(=不動産所得が発生)」といい、賃料が支払われない無償の貸借は「使用貸借」とされます。
 一般に、第三者間での取引では「賃貸借」が、親族間など信頼関係がある人とは「使用貸借」が多いといえましょう。
 なお、「賃貸借」では借地借家法上の”借主保護のルール”が適用されますが、「使用貸借」では適用されません。また、「使用貸借」は借主の一身専属権(注)のため、”借主の死亡で、原則、契約が終了(民法597条)”という特徴があります。
(注)一身専属権:その人自身に帰属させなければ意味のない権利や行使できないような権利をいいます。

◆ 使用貸借は相続対策としても効果が!?
 無償での貸し借りですので、相続対策効果などなさそうですが…
● 相続発生時の取扱い                 更地扱い(100%自用地評価)

 当然ながら、親に相続が発生すれば「使用貸借地」も相続財産に含まれて相続税がかかります。その土地をだれが引継ぐかに関わりなく、相続税法上は更地として”自用地評価”とされ、借地権を主張できません。
● 意外!やり方次第で相続対策効果が!
★ 親の所有する賃貸物件の子への売却

 相続対策で「使用貸借」するなら、アパートなどの賃貸物件としての利用がベスト。短期間で対策を進めるなら、親所有の賃貸物件を贈与/譲渡すればその後の家賃収入は子の財産として増える(資産形成)一方、親の収入は減り相続財産が増えない結果になります。
★ イザとなったら、親に売却!

 親御さんがご高齢になったときには、使用貸借地上の子の賃貸物件を親に売却して賃貸事業を続けると、相続時には更地扱いだったはずの土地が「貸家建付地」としてざっと2割程度評価減が、建物も「貸家扱い」とされて3割引きの評価で済むことに。やり方によってはさらなるメリットまで。

◆ 相続対策は経験豊富なプロにご相談を!
 一見、簡単そうにみえる対策でも、親子の置かれた状況や他の相続人との関係、適切な契約書類などの作成・保管管理、親御さんがご高齢となったタイミングでのフォローアップ、他の相続財産との関係などを十分考慮して実施しなければなりません。簡単だからという理由で自分でやってしまって、あとで後悔とならぬよう、ノウハウと経験のあるプロに事前にご相談ください。

 お客様の状況は十人十色で、「使用貸借」活用の対策でもお客様に合わせたオーダーメイドの対策が欠かせません。

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